加工肉と大腸がんの関係は? ハム・ソーセージ・ベーコンの研究を確認
最終更新日: 2026-09-23
BEvidence Level | 独立した人間研究 null件 | SR・メタ分析 11件 | 最終検索日 2026-09-07
- 加工肉を多く食べる人ほど大腸がんのリスクが高いという報告があり、IARCは加工肉をヒトに対して発がん性があると評価しています。
- 日本の研究では、男女・がんの部位・摂取量の測り方によって結果が異なり、明確な関連が見られない解析もあります。
- 研究で使われる1日50gは安全と危険の境目ではありません。相対リスクの上昇率を、そのまま自分ががんになる確率とは読めません。
Evidence Levelは当サイト独自の目安です。詳しい判定方法は調べ方のページをご覧ください。
治療中・治療後・経過観察中の方へ
この記事は研究の紹介であり、個別の治療方針の助言ではありません。本記事は診断・治療の代わりとなるものではありません。現在治療中・経過観察中の病気がある方は、食事や生活習慣の変更を検討する前に、必ず主治医にご相談ください。自己判断で治療を中断・変更しないでください。
先に結論
加工肉を多く食べる人ほど、大腸がんのリスクが高いという報告があります。国際がん研究機関(IARC)は研究全体を検討し、加工肉を「ヒトに対して発がん性がある」グループ1に分類しています。ただし、この分類から、食べた人が必ずがんになるとは言えません。同じグループの物質と危険の大きさが同じという意味でもありません。IARCの説明
日本の研究には、はっきりした関連が見られない解析もあります。本稿のEvidence Level Bは、編集部資料に基づくサイト独自の暫定評価です。IARCや世界がん研究基金(WCRF)の公式評価とは別のものです。
なぜこの疑問が気になるのか
ハムやソーセージ、ベーコンは、朝食やお弁当で使いやすい食品です。「体によくない」と聞くと、昨日食べた分まで気になるかもしれません。ここで知りたいのは、普段の食べ方と長い期間の病気の発生がどう関係しているかです。
加工肉とは、保存性や風味を高めるために塩漬け、発酵、燻製などをした肉を指します。牛肉・豚肉などの「赤肉」とは分けて考えます。IARCの定義
この記事ではどう調べた?
編集部が2026年9月7日に検索し、9月22日に整理した論文15本と、公的機関の資料3点を材料にしました。論文には、複数の研究を一定の方法で集めるシステマティックレビューや、結果を統計的にまとめるメタ解析、それらを再評価するレビューが含まれます。
論文の本数は、独立した証拠の数とは限りません。同じ参加者のデータが別の論文やレビューに含まれるためです。日本の共同解析と、その構成集団の単独報告も分けて読みました。編集部資料では論文15本のうち全文確認の記録があるものは7本で、残りは要旨中心です。すべての調整条件や研究の質まで十分に確かめられているわけではありません。
複数の研究をまとめるとどうだった?
2011年のメタ解析では、普段の加工肉摂取量が1日50g多い場合、大腸がんの相対リスクは1.18倍と報告されました。95%信頼区間は1.10〜1.28です。これは推定の不確かさを示す幅であり、個人の発症確率の範囲ではありません。STUDY-003
WCRFの報告書でも、加工肉を1日50g多く食べる場合の相対リスクは1.16倍(95%信頼区間1.08〜1.26)でした。ただし、これらのまとめに同じ元研究が含まれる可能性があり、別々の人数を足して証拠が増えたとは数えません。WCRFの報告書
研究の質には注意も必要です。2020年のメタ解析は摂取量が多い群でリスク上昇を報告する一方、対象29研究のうち25研究を深刻、2研究を重大な偏りのリスクがあると評価しました。食事の自己申告の誤差や、喫煙・飲酒など他の要因を十分に除けないことが、結果に影響し得ます。STUDY-004
評価の強さにも違いがあります。2021年のアンブレラレビューは、加工肉との関連を「示唆的」と評価しました。この論文は統計的な信頼性を独自の基準で評価しており、IARCの発がん性分類と同じ物差しではありません。「関連がない」と結論したものでもありません。STUDY-007
日本人の研究では、2014年のレビューでリスク上昇が報告されましたが、JPHC研究の主な解析では、加工肉との明確な関連は見られませんでした。高山研究では男性の結腸がんで関連が見られ、女性では明確ではありませんでした。STUDY-009、JPHCの公式解説、STUDY-012
日本の共同解析でも、食べる頻度で見ると女性の結腸がんに上昇傾向がありましたが、摂取量で見ると同じ傾向は明確ではありません。「日本人なら影響がない」とも、男女を問わず同じ程度の影響があるとも言い切れません。STUDY-010
どのくらいなら大丈夫?
研究に登場する「1日50g」は、摂取量とリスクの関係を比べるための単位です。「50g未満なら安全」「50gを超えた日から危険」という境界ではありません。IARCも、安全と言える量があるかどうかは、評価したデータから結論できないと説明しています。IARCのQ&A
また、「18%上昇」は相対的な増加です。「食べた人の18%が大腸がんになる」という意味ではありません。もともとの発症の見込みが人によって違うため、この数字だけで自分の危険度を計算することはできません。一度の食事についての予測にも使えません。
実生活ではどう考えればいい?
WCRFは加工肉をできるだけ控える方向を勧めています。日常では、どの食品をどれくらいの頻度で食べているかを確かめ、習慣的に多くなっている部分を見直す考え方につながります。WCRFの報告書
一方、今回の材料から「週に何回までなら大丈夫」といった個人向けの回数は決められません。ブランド、添加物の表示、調理法の違いだけで、安全性を順位づけることもできません。持病や治療、栄養状態に合わせた食事の判断は医師に相談してください。
がん予防全体の中での位置づけ
食事の一品だけで、大腸がんの発生を説明することはできません。国立がん研究センターの解説でも、肉の過剰摂取を避けることと併せて、飲酒、体重、運動などの生活習慣に気を配ることが示されています。国立がん研究センター
加工肉を減らせば個人の発症を防げるという保証ではなく、健康全体を考える中の一つの選択です。この記事は、個別の診断や治療の代わりにはなりません。
研究の一覧
以下は材料に含まれる論文の一覧です。各行を互いに独立した証拠として数えるものではありません。RRは相対リスク、HRは追跡期間中の発生の比較に使う指標です。括弧内は95%信頼区間です。
| 論文 | 年 | 方法・対象 | 主な結果と読み方 |
|---|---|---|---|
| STUDY-001 | 2021 | 赤肉・加工肉とがんのメタ解析 | 加工肉の多い群で大腸がんリスク上昇。材料は要旨中心で、該当する信頼区間は未確認 |
| STUDY-002 | 2017 | 食品・飲料と大腸がんのメタ解析 | 材料の数値は赤肉+加工肉の合算。加工肉単独の値として使わない |
| STUDY-003 | 2011 | 前向き研究のメタ解析 | 加工肉50g/日増で大腸がんRR 1.18(1.10〜1.28)。安全境界ではない |
| STUDY-004 | 2020 | 加工肉を対象とするメタ解析 | 多い群対少ない群で大腸がんRR 1.13(1.01〜1.26)。元研究の偏りに強い留保 |
| STUDY-005 | 2017 | 観察研究のメタ解析 | コホート研究に限った高摂取対低摂取の大腸がんRR 1.15(1.07〜1.24)。部位で結果が異なる |
| STUDY-006 | 2018 | 食品群ごとのメタ解析 | 加工肉50g/日増で大腸がんRR 1.17(1.10〜1.23)。STUDY-007でも同じ元データを使用 |
| STUDY-007 | 2021 | メタ解析の信頼性を再評価 | 加工肉は「示唆的」。IARCの分類とは評価基準が異なる |
| STUDY-008 | 2001 | 前向き研究のメタ解析 | 古い研究をまとめた報告。摂取量の比較単位が異なるため数値の単純比較を避ける |
| STUDY-009 | 2014 | 日本人の研究のメタ解析 | 加工肉の多い群対少ない群で大腸がんRR 1.17(1.02〜1.35)。症例対照研究も含む |
| STUDY-010 | 2019 | 日本の6コホートの共同解析 | 頻度・量、男女、部位で結果が異なる。構成コホートの報告と二重計上しない |
| STUDY-011 | 2011 | JPHCコホート | 加工肉について明確な関連なし。共同解析の構成集団で、公式解説DOC-003も同じ研究 |
| STUDY-012 | 2017 | 高山コホート | 男性の結腸がんで上昇、女性では明確な関連なし。共同解析との参加者の重複に注意 |
| STUDY-013 | 2023 | 東アジアの赤肉研究のメタ解析 | 赤肉で有意な関連なし。加工肉単独の安全性を示す研究ではない |
| STUDY-014 | 2025 | 英国の女性を追跡 | 材料に掲示された値は赤肉+加工肉の合算。加工肉単独の効果として使わない |
| STUDY-015 | 2022 | 肉と健康全般のアンブレラレビュー | 加工肉と結腸がんの関連を強い証拠と評価。材料の要旨には効果量の数値なし |
よくある質問
ハムを食べてしまいました。心配すべきですか?
紹介した研究は、普段の食習慣と、その後の病気の発生を比べています。一度食べたことから個人の将来を判断するものではありません。
日本の研究では関連がないなら、気にしなくてよいのですか?
関連が明確でないという結果は、安全の証明ではありません。摂取量や測り方、対象人数などで結果の見え方は変わります。日本の研究にも上昇方向の報告があります。
赤肉の研究も、加工肉の証拠として読めますか?
赤肉だけの研究や、赤肉と加工肉を合算した数値を、加工肉だけの結果に置き換えることはできません。下の一覧でも対象の違いを分けました。
研究が多ければ、確実と言えますか?
同じ参加者を何度数えているか、どの食品・がんの部位を調べたか、研究に偏りがないかも大切です。論文の本数だけで結論の強さは決まりません。
参考文献
- STUDY-001(2021)Consumption of red meat and processed meat and cancer incidence: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. PMID: 34455534
- STUDY-002(2017)Foods and beverages and colorectal cancer risk: a systematic review and meta-analysis of cohort studies, an update of the evidence of the WCRF-AICR Continuous Update Project. PMID: 28407090
- STUDY-003(2011)Red and processed meat and colorectal cancer incidence: meta-analysis of prospective studies. PMID: 21674008
- STUDY-004(2020)Processed meat intake and incidence of colorectal cancer: a systematic review and meta-analysis of prospective observational studies. PMID: 32029911
- STUDY-005(2017)Red and processed meat consumption and colorectal cancer risk: a systematic review and meta-analysis. PMID: 29137344
- STUDY-006(2018)Food groups and risk of colorectal cancer. PMID: 29210053
- STUDY-007(2021)Role of Diet in Colorectal Cancer Incidence: Umbrella Review of Meta-analyses of Prospective Observational Studies. PMID: 33591366
- STUDY-008(2001)Systematic review of the prospective cohort studies on meat consumption and colorectal cancer risk: a meta-analytical approach. PMID: 11352852
- STUDY-009(2014)Meat consumption and colorectal cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population. PMID: 24842864
- STUDY-010(2019)Meat subtypes and colorectal cancer risk: A pooled analysis of 6 cohort studies in Japan. PMID: 31482651
- STUDY-011(2011)Red meat intake may increase the risk of colon cancer in Japanese, a population with relatively low red meat consumption. PMID: 22094846
- STUDY-012(2017)Meat consumption and colorectal cancer risk in Japan: The Takayama study. PMID: 28256076
- STUDY-013(2023)Association of Red Meat Intake and Colorectal Cancer among East-Asians: A Systematic Review and Meta-analysis of Observational Studies Performed between 2011-2021. PMID: 37774211
- STUDY-014(2025)Diet-wide analyses for risk of colorectal cancer: prospective study of 12,251 incident cases among 542,778 women in the UK. PMID: 39779669
- STUDY-015(2022)Total, red and processed meat consumption and human health: an umbrella review of observational studies. PMID: 35291893
公的資料(論文とは別枠):
- DOC-001: IARC. 加工肉・赤肉の評価発表/同評価のQ&A。PMIDなし。
- DOC-002: WCRF/AICR. Meat, fish and dairy products and the risk of cancer(2018)。PMIDなし。
- DOC-003: 国立がん研究センター. 赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて。原著はSTUDY-011(PMID: 22094846)と同一。